
CALS時代の製品開発プロセスの変革と経営革新
講師:根津和雄氏 大阪会場 平成9年2月20日
1. はじめに
1993年に商用CALSがスタートして以来、米国において電子商取引環境の構築を目指してインターネット/イントラネットを導入する企業が急速に増加している。このあたりの事情は昨年ボストンで開催されたインターネット・ワールド‘95の熱気からも推測することが出来る。ビジネスが国際化するとともに、市場における競合は一層激しくなり、顧客への対応も高速化が求められている。CALSのインフラが普及すると、この傾向はますます激しくなることが予測される。
CALSの考え方は、社会インフラ全体に大きな影響を及ぼすと言われているが、とくに21世紀に向けてのCALSインフラ時代の製造業の経営戦略という視点からまとめると次のようになる。
(1)縦型組織から横型組織への変革
(2)国際的高度情報化システムヘの転換
(3)技術の連続性から非連続性の時代への対応
(4)生産者優位から消費者優位への政策転換
(5)コアビジネス&コアテクノロジーの明確化
(6)バーチャル・エンタプライズ・ビジネスの導入
(7)製品開発プロセスの変革による競争優位の戦略
(8)高付加価値化のための人材育成と評価方式の転換
このような観点から日本の製造業は、過去、実行してきた大量生産時代に効果を発揮した従来型の製造部門中心のローカルな改善活動から、グローバルマーケットを意識した、世界に通用する総合的な視点に立った企業に早急に変身して行かなければならない。その中でも最優先で実行するべきものは製品開発プロセスの変革である。
そこで、ここでははじめにCALSの概論とその導入手順について説明し、その後でCALSインフラにおける製品開発プロセスの変革について述べる。
2. CALS時代の技術/製品開発の課題
2−1 CALSとシステム/組織の推移
CALSの概念が普及するにしたがってシステムや組織の基本構造がどのように変化推移していくのかを考えてみると、第1図のように予測することができる。
19世紀後半から20世紀の大量生産時代には、大型コンピュータをホストに据えた集中階層型システムが最も効率の良いシステム構造であるといわれ、実際に極めて多くの実績によってその効果を示してきた。しかし、多品種少量生産時代になるとシステムや組織にフレキシビリティが要求されるようになり、水平分散型クライアント・サーバー・システムヘと移行せざるを得なくなってきた。
今日ではクライアント・サーバー・システムが広く採用されるようになったが、これらのシステムはあくまでも企業内システムの範囲で、国境を越えたオープン環境には十分に対応しきれてはいなかった。この要求に答えたのがネットワーク・コンピューティングとしてのインターネットである。インターネットはユーザードリブンで発展し、今日では企業内LANとしてのイントラネットにまで展開している。
このようになるとクライアントの数が非常に多くなり、クライアント・サーバー・システムにエージェントと言われるような機能が必要になってくる。そして、さらにオープン化が進み、クモの巣状にネットワークが展開され、完全にボーダレスのシステム/組織にならざるをえなくなる。これを水平自立分散調和型シ
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